美味しい魚を仕立てる知識
釣った魚をすぐに脳締め・血抜き・神経締めした方が良い理由
釣った魚をすぐに脳締め・血抜き・神経締めした方が良い理由をご存知ですか?
簡単に言えば鮮度を保つためです。
その理由を詳細にご説明します。
魚を脳締め・血抜き・神経締めする理由・目的
魚を脳締めする理由
生きている魚を脳締めする理由は、魚を苦しませることなく瞬殺することです。
瞬殺された魚は、陸上で抵抗し暴れる時間を超短縮出来るので死ぬまでに失うエネルギーが少なくなります。
つまり、死後硬直を遅らせるATPを多く保持した状態になり「身が生きている状態」を長く保つことができます。
魚の血抜き処理をする理由
次に魚の血抜き処理をする理由は、魚の身が生臭くなるのを防ぐためです。
血液は雑菌が繁殖する環境として最も好む場所で、血液が身に染みると腐敗や生臭いにおいの原因になります。
脳締めを行った後、内臓を取り出す処理の前にエラを切って血抜き(放血)を行いましょう。
血抜きする時の水温は、魚が生きている海水温と同じか、それに近い温度が良いです。
氷水の中などは水温が低くなると魚の心臓の動きが鈍るので、良い方法ではありません。
魚を神経締めする理由
最後に魚を神経締めする理由です。
脳締め後に血抜きをした状態の魚は、脳死状態になっているだけで心臓と体が活きています。
その状態では、脳締め後15分後位から魚体が痙攣を起こし勝手に動き出してしまいます。
そうするとエネルギーのATPを消耗してしまい、死後硬直を早めてしまいます。
上記の理由から、釣った後は脳締め、血抜き、神経締めまで行うようにしましょう。
時合などで、すぐに処理ができない場合は、スカリやストリンガーに活かしておいて、落ち着いてからでも行いましょう。
釣った後に神経締めまで行った方が良い理由
神経締めまで行った魚は死後硬直後の熟成から腐敗のタイミングも遅らせることができます。
つまり、身が活きた状態を長く保つことが可能になり、旨味成分であるイノシン酸が最高の状態で食べることできます。
生きている魚をすばやく締め、ATPが沢山ある状態の魚が美味しいか?
「ATP=旨味成分」なら、活きている魚を脳締め、血抜き、神経締めしてすぐ食べれば、ATPが沢山あるから美味しい?
そう考えた人がいるかも知れませんが、答えはNOです。
締めてすぐ食べる魚が美味しいわけでは無い理由
締めてすぐの魚はATPから旨味成分のIMP(イノシン酸)が生成されていません。
死後硬直して魚体の身質が固くなっている状態では、まだ旨味成分のIMP(イノシン酸)が生成されていません。
つまり魚本来の味や旨味が魚体に浸透していない状態なので「味のしない」魚です。
イノシン酸の数値が最高になるのは、死後硬直が解けて身が柔らかくなっていく過程にあるといえます。
居酒屋や飲食店などのいけすから取り出されて、すぐ締めて提供される魚は新鮮で身がプリプリしているのは死後硬直前の状態になっている魚を食べているからです。
好きなのはどちらの食べ方でしょう?
「プリプリの魚を食べたい」なら、魚を締めて死後硬直が始まるまでに食べる。
「魚本来の旨味を味わいたい」なら、魚を締めて適切な時間寝かせて(熟成)した魚を食べる。
上記の通り、食べるタイミングに合わせて処理時間を逆算することができます。
ですが、人間は欲張りなもので、中には「魚本来の旨味がある、プリプリの魚」が食べたいという方もいます。
「熟成した魚の身が柔らかい」と感じる場合は「魔法の塩」を使うことでプリプリとした食感を取り戻すことができます。
◆リンク
熟成には魚種による違いや個体差もあるので簡単ではありません。
ですが、熟成の期間も見極めることが出来るとより美味しくお魚を食べることができるようになります。
(熟成の温度によっても違いがあります)
◆リンク