美味しい魚を仕立てる知識
究極の血抜きとは
究極の血抜きはこうして生まれた
「津本式 究極の血抜き」とは美味しい魚を熟成させることにより、魚の持つ旨味を最大限に引き出すための最高の血抜き処理です。
宮崎県の水産会社に勤務する津本 光弘さんが、日々の仕事の中で品定め、血抜き、熟成保存に至る工程を徹底的に研究する中で生み出されました。
「新鮮な魚=美味しい魚」という常識を破り、限りある水産資源を無駄しない文化を定着させる、魚の革命を起こすために研究してたどり着いた「津本式 究極の血抜き」です。
魚は熟成することで最高に美味しくなる
最高の処理をして寝かせた魚は、魚本来の旨味が引き出されてとても美味しくなります。
「新鮮な魚が美味しい」と評価されているのはコリコリの食感だけで、熟成した魚の方が味は美味しいです。
https://sakana-japan.com/aged-fish/
釣った魚をすぐに締めて熟成させると美味しくなる理由
魚が臭い理由は全て魚の血の腐敗が原因
生臭い、泥臭い、血臭い、磯臭い
魚が臭いにおいになる原因は全て魚の血によるものです。
不完全な処理を施された魚の中に残った血や水分が、保存されている間に酸化して腐敗に追い込み悪臭を放つようになります。
従来の血抜きで処理できていなかった皮目に繋がる血管の血も、中骨の動脈の血も「津本式 究極の血抜き」を行えば魚から臭みが消えてなくなります。
最悪なのは、釣り人や漁師の方に多く見られる処理の方法が「生きた魚を氷水につけるだけ」のいわゆる野締めです。
氷水に入れないのは論外ですが、この氷水に入れるだけの場合、魚が死ぬまで暴れることで身が焼けて変色し、熟成どころか日持ちすらしない、美味しい魚をまずくしてしまいます。
究極の血抜きが優れているのは、魚が死んでしまって締まった状態でも血も抜けるということです。
死んで2~3日経った魚の血も抜けるので、長期間美味しく食べることが可能になります。
津本式 究極の血抜きに使用する道具まとめ
究極の血抜き手順
究極の血抜きは以下の4手順です。
1.脳締め(脳死)
2.エラを切って放血
3.神経締め(神経抜き)
4.究極の血抜き
1.脳締め(脳死)
エラから目に向かう延長線上に魚の脳があるので、そこをアイスピックで潰して脳締め(脳死)させる。
目と目の間の上部にある眉間からするのは、魚が暴れることがあるので危険です。
安全なのは魚のエラを足で潰さないように抑えて、側面からコメカミを潰す方法です。
その方がすぐに締められて魚も苦しまない(はず)で、脳締めする理由は釣った魚をすぐに締めて熟成させると美味しくなる理由にまとめている通り、旨味成分のIMP(イノシン酸)を生成するエネルギーとなるATP(アデノシン三リン酸)を保ったまま瞬殺するためです。
2.エラを切って放血
エラの白い部分を両サイド切り、魚の顎とエラを切り離した状態で海中(水中に入れて)に1分ぐらい振り続ける。
エラの赤みが引いて白くなってきたらOKのサイン。これで70%~80%は血が抜けます。
見た目上の問題で尻尾を切っても良いなら尻尾も切断する。
その後エラを切り離します。
3.神経締め(神経抜き)
尻尾の切断面を開いて、背骨の上にある白い穴にワイヤーを通して締める。
釣具屋さんに売ってる0.8mmのワイヤーで大抵の魚は大丈夫
野締め、活け締め、神経締めの違いはこちら
https://sakana-japan.com/tighten-distinction/
4.究極の血抜き
まず尻尾からノズルを入れて血を抜き、ホースで行う究極の血抜き時にうっ血状態にならないようにします。
究極の血抜きはホースで水圧をかけてエラから水を入れて、魚体がパンパンに膨らみ、尾の切断面から出る水が透明になれば大丈夫です。
ノズルで抜ける血は中骨の動脈の血までで全ての血は抜けません。
究極の血抜きはエラにホースを当てて、水圧をかけて全身の血管に水を流し血を送り出すことです。
魚体から全て血を抜くためには、エラにホースを当てて圧力を掛けて行う「究極の血抜き」をする必要があります。
このやり方で「究極の血抜き」を行って、最低3日は寝かせてください。
ちなみに、血抜きに水道水を使って良いのか?という質問がありますが、体内に残る少量の水分より、体内の血を抜く事の方が大切ですので、水道水で処理して問題ありません。
魚の処理をされる方の中には「真水で血抜きを行った場合は魚の持つ旨味や風味が抜ける」「血抜き処理するのは真水より海水の方が良い」と言われる方もいます。
それは真水と海水で浸透圧の差があることが原因だと思うのですが実際はどうなのでしょう。
https://sakana-japan.com/osmotic-pressure/
魚を美味しくさせるための究極の血抜きですから。[/chat] [chat face=”man3″ name=”” align=”left” style=”type2″]骨の中の血まで抜く方法はこれ以外にないとは思います。[/chat]
5.魚の内臓処理
「究極の血抜き」をして血を抜いた魚から内臓を取り除いて究極の熟成保存できる状態にします。
まずはエラを取り外して、次に魚の肛門部分から切り込みを入れます。
この時の切る幅は、腐敗を防ぐために「内臓を切り離して、血合い部分の掃除が出来る幅」だけの最小限にすることで、切断面からの腐敗を防ぐことができます。
腸の一番外側を指で切って、エラの部分から内臓を全て取り出します。
[chat face=”man3″ name=”” align=”left” style=”type2″]取り出した内臓の腸に脂が帯びていたら相当美味しい魚です。旨い魚は内臓を見ればだいたい分かります。[/chat]
内臓を出したら、血合いをこそぎとりきれいにします。
血合いの掃除は、専用の道具でも、斜めにカットしたホースでも構いません。
※ウロコは魚の旨味を外に逃さないように守ってくれる効果があるので、取らずに熟成します。
究極の熟成手順
究極の熟成は以下の2手順です。
1.熟成保存用処理
2.究極の熟成保存
3.究極の熟成をする日数・期間
4.究極の熟成をした魚を食べる
1.熟成保存用処理
「究極の血抜き」が終わった魚の水分をペーパーで拭き取り、内臓部分にキッチンペーパーを詰め込みます。
※究極の熟成中に雑菌の繁殖を防ぐために、この時しっかり魚の水分を拭き取ります。
そしてキッチンペーパーで魚を巻いて、更に新聞紙などでくるみます。(これは魚のヒレが熟成用の袋を突き破らないようにするためです)
その状態でポリ袋に入れて、ホースなどで袋の空気を抜いて「弱真空状態」にします。
真空にする機械がある方は真空パックしても大丈夫です。
真空状態を作るのは熟成している魚の身の酸化を防ぐと同時に、空気中の雑菌を除去する役割があります。
2.究極の熟成保存
発泡スチロールに水を張って、弱真空状態にした魚を入れた後に氷を入れて、タオルなどで蓋をします。
氷水に浮かべるのは、寝かせて置いた場合、熟成中に魚の身が自分の自重により押しつぶされることを防いでくれます。
1度の氷水の中で熟成させるのでは、氷水の中に入れる方が魚の身が全体的に冷えるので酵素や細菌の活動を抑え腐敗を防ぐ役割もあります。
海水(塩水)を使うことで氷水の温度を0度に下げることが可能です。
この処理をする事によって1週間以上寝かせて、魚本来の旨味を出していきます。
3.究極の熟成をする日数・期間について
前提として全ての魚が熟成すれば旨味が増して美味しくなるわけではありません。
熟成の期間はその魚のポテンシャルを見て判断します。
目利きが不安で出来ないのなら、3日程度で食べることを推奨します。
※そもそも熟成魚を食べるのは自己責任です。
熟成期間を決める一つの基準になるのは、魚の内臓を出した時に脂が乗っているか?です。
脂を持った肥えた魚は寝かせることで化けるほど美味しくなります。
反対に、脂を持ってない痩せた個体はどんなに熟成しても美味しくなりません。
私が基準にしている魚種ごとの熟成期間の目安
根魚:1週間~2週間
青物:3日間~1週間
光物:1日間~3日間
底物:1日間~2日間
4.究極の熟成をした魚を食べる場合
いっぺんに食べない場合は、半身ずつ使います。
食べない方の半身は骨付きの状態で残し、究極の熟成方法で保存します。
そしてもう半身を食べる時に起こして食べることで、さらに熟成させることが可能です。